近年,製造現場では従来の少品種大量生産から多品種少量生産または変種変量生産へと移行しつつあり,より柔軟性の高い生産システムが求められています.
研究室では,従来のように複数の機械で固定された生産ライン構成するのではなく,工程変更やレイアウト変更も容易な産業用ロボット適用したフレキシブル生産システムについて,研究を行っています.ロボット先端に搭載した回転主軸による機械加工や,3Dスキャナの搭載による備品の形状測定や検査などに取り組んでいます.
超精密加工や半導体技術の進歩に伴い,広い運動範囲においてサブナノメートルの位置決め精度を持つ超精密高速位置決めシステムの実現が望まれています.本研究では,
(1)空気軸受,リニアモータ駆動による完全非接触構造
(2)光路および信号処理の工夫によりおよそ0.01ナノメートルの計測分解能を達成したレーザー干渉計による変位計測
(3)重心駆動
(4)アッベの原理を満たす変位計測
などの特徴を持つ,新たな高速超精密位置決めテーブルシステムの開発を進めています.
これらの可能な限りの誤差発生要因の排除により,開発したシステムは150mmの広い運動範囲にわたって0.3ナノメートルの高い位置決め分解能を実現可能としています.
ナノメートルオーダの位置決め精度を多自由度運動で同時に実現するためには,徹底的にシステム内の誤差要因を排除した,従来のテーブル構造とは異なる新たな構造概念の位置決めテーブルシステムが必要となります.
本研究では,理想的な平面運動が可能なXYテーブルシステムの実現を目的として,完全非接触構造を採用した平面運動テーブルの開発およびその位置決め特性評価を行なっています.さらに開発したテーブルシステムを用いて微細切削加工を行い,加工中のテーブル運動特性や加工面の評価などを併せて行っています.
複雑3次元形状を有する部品の超精密加工に対応するためには,工作物または工具を鉛直面内で高精度に傾斜運動させるステージが必要になります.
このようなステージの駆動要素には,偏心した負荷を安定して高精度に駆動するために高いトルクと高い精度が同時に要求されます.この研究では,空気圧アクチュエータと電磁アクチュエータを組み合わせた新たなコンセプトに基づく駆動要素を新たに提案し,さらなる高精度駆動に関する検討を行っています.
超精密切削加工を自動化するためには,加工中に状態を認識しながら,常に適切な加工状態になるように制御する必要があります.この研究では,MEMS技術を応用して製作したマイクロ温度センサを用いて計測した温度情報を基に加工点の温度が一定になるように加工機の動作(切削速度)を制御することで,加工中の温度をほぼ一定に保つ温度条件拘束型適応制御を実現しました
従来,熱的挙動の情報は感度が低く,伝達にも時間がかかると思われていました.しかし,超精密切削加工ではセンサをダイヤモンド工具上の刃先に極めて近い位置に配置できるため,制御系の構築にも応用できるだけの感度と応答性を持つ情報を得られることを確認しました.
近年,超精密加工機に対してさらなる高精度化および加工領域の拡大が要求されており,ナノメートルオーダの加工精度の実現が望まれています.
本研究では,100mmオーダの加工空間でナノメートルオーダの加工精度を有する機械加工を実現するために,新たな構造概念に基づくマザーマシンの開発を進めています.
(1)空気軸受,リニアモータ駆動などによる完全非接触構造
(2)主要構造へのセラミックス材料の適用
(3)アクティブ制振システムによる構造体の支持
など,可能な限りの熱的,力学的誤差発生要因の排除により,広い運動範囲にわたって1ナノメートルの分解能による加工を実現可能としています.開発したシステムを用いた加工実験において,超精密切削加工によりナノメートルスケールの微細パターンの創成を実現しています.
非球面ガラスレンズなど高精度な光学素子の実現のために,ナノメートルオーダの形状精度および表面粗さが要求されており,この実現のために数10mmの任意形状をナノメートルオーダの精度で測定可能な三次元ナノ形状測定システムの開発が必要とされています.
本研究では,SPMの測定原理を用いた高分解能プロービングシステムと運動誤差発生要因を可能な限り排除した高精度広範囲走査機構を適用することにより,数10mmの計測範囲とナノメートルオーダの計測分解能を同時に実現する新たな形状計測システムの研究開発を進めています.
開発した形状計測システムを用いた計測評価実験をおこなった結果,mmスケールの傾斜面を有する球面の計測が可能であり,ナノメートルオーダの高い繰返し計測精度を有することを明らかにしています.